INTERVIEW 02

創業55周年記念 役員インタビュー

執行役員

伊藤 景光

国際事業部門担当
企画部門担当

「古き良き大和を訪ねて」

1966年(昭和41年)3月23日、創業者の故・井上僖次氏が大阪市天王寺区の雑居ビルから始めた小さな事務所。それが現在、社員約300人を抱える全国規模の会社に成長しました。
その過程には、鑑定評価の創世記から今日まで、何事にも誠実に取り組み、未来を見据えるチャレンジ精神がありました。ここでは、そんな大和を支え続けている二人に、古き良き大和と、未来の大和について語ってもらいました。

入社された当時のことを教えてください。

私が入社した1999年当時の虎ノ門の東京支社は、新入社員の私を含めた7名のうち、鑑定士は故・小野寺支社長1名というメンバーでした。今現在、東京本社に在籍している鑑定士が約70名ですから、驚きですよね。20年以上前の事ですが、社員全員の席の配置など事務所の様子を鮮明に覚えており、とても懐かしく感じます。事務所の広さも当時は20坪程度でしたし、平日22時以降と日曜日はオーナーの方針でビル全体が閉館になるので作業は不可能でした。それに付属資料を担当者自ら作成するため、副本が多いとがっくりしていたのを思い出します。現在と違い色々と不便でしたが、担当案件も決して多いとは言えず、一つの案件をじっくり検討しても熟せる仕事量でした。前職(某大手都市銀行)は深夜に及ぶ業務が恒常的で、日の長い夏であっても明るい時間帯に会社を退社するのを知らない生活を送っていた私は、環境の変化に驚いたというか、こんな仕事量で給料を頂いて良いのか気にしたこともありました。

小野寺支社長は、私のような入社して間もない新人の補助者に、全幅の信頼を寄せて下さっていましたね。評価先例や書物を調べ、価格の試算や本文を私なりに作成して、検閲してもらえば完璧な成果物ということで、指摘はほとんど受けた記憶がありません。お決まり の「いいじゃないですか」の一言をいただいて終わりでした。時代がおおらかだったこともありますが、昔は懐の大きい方が多くいらした気がします。ただおおらかすぎる、というエピソードもあります。小野寺支社長と2人で案件の説明に行く機会があった時のことですが、「別の予定が入ってしまったから一人でお願い」と当日の朝になって突然言われ、入社直後でお客様の前で評価の説明をした事のない自分は慌てふためき、実際にお客様の事務所に出向けば、こちらは私1名なのに8名の方が出てこられ、冷や汗をかきながら必死に説明した事もありました。翌日、状況説明しましたが内容には関心が無いようで「一人で大変だったね」でした。

今思えば、教育のためにあえて一人にさせたのかも知れません。とにかく、鑑定評価の基礎やお客様との対応を学ばせてもらった、今ではなかなか経験できない、有意義な日々だったと思います。

今まで大和で過ごされて、印象に残っている時代は?

今から20年弱前、米国同時多発テロが起きたり、株価が低迷して銀行の不良債権処理が進んだりして世の中不穏な時代でしたが、その不良債権の処理にあたって、個別に債権回収を行うのではなく担保不動産を一括で処理する「バルクセール」が多く、鑑定業界もその影響を受け、短期間で多数の評価を行う業務を行っていました。ものすごく忙しかったのですが、相対的にメンバーが若かったこともあり纏まりがありました。入社間もない新入社員に深夜まで検算をお願いすることもありましたし、業務に追われるがあまり、現地に違う物件の資料を持って行ったりする者もいました。仕事が深夜に及ぶ日も多く、20時過ぎになると先輩が飲み物等を配り始めて、ミスがあれば全員でフォローして乗り切る連帯感、皆が一つの方向に向かって助け合いながら仕事に取り組む責任感のようなものを感じていました。案件の担当になれば、すべての責任を持つ気持ち、今思うとその環境が、鑑定士・補助者の区別なく、すべての若手を育てるとても良い機会だったかも知れません。

ご自身が一番苦労された業務は?

15年ほど前から、J-REITを中心とした証券化の評価業務が急激に増加しました。J-REITそのものは2001年9月スタートですが、当時は証券化の評価はほとんど行っていなかったため、お客様から評価方針等のヒアリングを受けても自信を持って説明できず、時にはお客様から怒られる日々でした。そんな折、住宅系J-REITに勤める知り合いからレジデンシャルの評価を行って欲しいと打診があり快く引き受けたものの、レジデンシャルの評価経験が少なく、皆で知恵を出し合いながらどうにかやり遂げた事を思い出します。評価の核となる項目について色々調べたものの、結論を導き出すのが難しかったと記憶しています。現在の当社の評価基準にその名残りを見ると、正直、かなり恥ずかしい思いがありますね。

最近では、不動産評価の分野にいる人間として地球環境にどんなことが貢献できるか、と考えたことです。危機意識は少なからずあっても、環境問題とは無縁な業務を行っていた中で、持続可能な環境評価の高い不動産(環境不動産)という考え方に触れ、CASBEE-不動産のコンサルティング業務を軌道に乗せることに苦労しました。当社の企業理念にもある「サスティナブルに成長する未来」へ貢献できると自負しています。

To The Future


これからの大和にできることは、どのようなことと考えますか?

私が入社した頃と今では、会社の規模が大きく変わりました。先ほどお話したJ-REITでの当社の鑑定評価額は、J-REIT市場全体の約四分の一にも上ります。ありがたい事にお客様からの評価依頼が増加した事で、データが社内に蓄積する環境となり、評価の質も常に向上しています。もちろん、お客様から受領したデータは守秘義務があるので一定の制約が生じますが、現在私が担当する事業企画部で、こういったデータを活用して当社の事業企画の幅を広げることができると考えています。よりお客様のニーズにお応えできる、お客様目線に立ったコンサルティングサービスの提供ができると感じています。多種多様な専門家が社内に常駐している環境を活かし、また昔からの人を育む縦横に絆が強い社風でもって、当社にしかできない業務を展開していきたいと思っています。

PROFILE

伊藤 景光Kagemitsu Ito

執行役員
国際事業部門担当
企画部門担当

1999年入社。
不動産鑑定士・CASBEE-不動産評価員。
日本で不動産証券化が始まった創世記から証券化不動産の評価を担当。住宅やオフィス、商業施設を中心に数多くの評価を手掛け、海外を含め多彩な評価実績を有する。