TEAM

大和不動産鑑定の現場から

インダストリアルINDUSTRIAL

門脇昭憲

東京鑑定本部
不動産鑑定士

門脇 昭憲AKINORI KADOWAKI

令和3年入社
平成20年不動産鑑定士登録

― 物流施設の評価にあたって留意している点はどんなところですか?

「物流市場の変化」に留意しています。物流市場は、リーマンショック以降大きく変化しています。例えば、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、日本でもe-コマース(EC)市場が拡大しました。しかし日本のECの普及率はアメリカやイギリス等と比較して低く、更なる物流需要の拡大が期待されます。また、製造業等が物流機能を外部委託し、業務効率化が進み、3PLモデルは成長しています。その他、物流施設への新しいニーズとして、高頻度配送に対応可能であること、より一層の効率化のため集約すること等があり、高機能の大規模物流施設への需要が拡大しています。
以上のことから、売買市場においては、市場参加者が増え、オフィスやレジデンスと同様の投資対象となっています。

また賃貸市場においても同様に市場参加者は増加しており、テナントの業種及び業態、荷主や荷物の内容等が多種多様になり、さらに物流施設開発業者の新規参入も増加していることから、開発素地価格や新規供給動向は常に変化しています。

このように物流市場は、賃料水準やキャップレート、開発素地価格や建築費等は刻々と変化しています。評価においては、この変化を適切に反映する必要があります。そのため、物流業界の市場動向の把握や賃貸及び売買事例等の収集をはじめ、依頼者・精通者へのインタビューによりタイムリーな情報収集に努めております。

― 今後の課題はありますか?

物流施設の中でも、特にBTSや一棟貸しについては、賃貸借契約が長期にわたることが多くなっています。近年、物流施設の賃料上昇の結果、現行賃料と市場賃料に乖離が認められるケースが散見されますが、この乖離をどのように評価に反映するかを課題と考えています。

また、データセンターや冷凍冷蔵倉庫については、従来の物流施設の賃貸借で見られる土地・建物だけを賃貸する契約ではなく、土地・建物・設備を一体として賃貸する契約が見受けられるようになりました。このような契約は事例としては徐々に増えてきていますが、収集できる情報が少なく、この点が評価の課題と認識しています。
今後も継続して情報を収集・整理し、依頼者に的確な情報提供ができるよう研鑽を重ねる必要があると考えています。

門脇昭憲

― チームの活動状況を教えて下さい。

チームにて物流市場の情報を収集・整理し、市場の動向や変化を適切に評価へ反映させるアプローチを検討しております。

また、社内セミナーを開催し、物流施設だけでなく、データセンターや冷凍冷蔵倉庫など新しいアセットについても評価スキルの向上の機会を提供しています。その他、定期的に社外セミナーを開催しています。

赤坂祐介

東京鑑定本部
不動産鑑定士

赤坂 祐介YUSUKE AKASAKA

平成27年入社
平成30年不動産鑑定士登録

― インダストリアルチームを選んだ理由を教えてください。

正直に言うといちばん分からないアセットだったからです(笑)。オフィス、住宅、ホテル、商業施設といった建物は、鑑定という仕事に携わっていなくても、普段の生活の中で実際に利用する機会があることから、イメージしやすいアセットでした。

しかし、物流施設というのは人々の生活に欠かせないインフラでありながら、その中身や実際に物の流れがどうなっているのかというのはあまり知られておらず、私自身もイメージが持てていませんでした。私が入社した当時は物流特化型リートが増えはじめ、物流施設が投資対象としてより注目されはじめてきた時期でもあったため、勉強するのにちょうど良い機会だと思いインダストリアルチームに入ることを決めました。

― インダストリアルチームはどんな活動をしていますか?

主には情報収集、収集した情報の整理、整理した情報の共有といった活動がメインとなります。

物流施設は現在、投資対象として最も人気のあるアセットの一つですが、物流施設に関する情報は他のアセットと比べると入手が非常に困難で、とても貴重なものとなります。そのため、日頃からお客様へのヒアリング、公表資料の調査・分析、実際に受注した案件の情報整理を行い、最新のマーケット動向を的確に評価に反映できるよう努めています。

また、インダストリアルチームの取り組みとして、定期的に社外セミナーを開催しています。不動産ファンドや事業会社、3PLにお勤めの方など、多くの方々にご参加いただき、ありがたいことに毎回ご好評をいただいております。その他にも、社内向けにデータセンターや冷凍冷蔵倉庫に関する勉強会を行い、実際に新築の物流施設の内覧会に参加し、最新のマテハン機器や設備、構造を見て学ぶことで、個々のスキル・知識の向上に努めています。

赤坂祐介

― 物流評価の醍醐味について

「倉庫」というと、ただ荷物を置いておくだけの昔ながらの平屋建てをイメージする方もいると思いますが、近年のいわゆる大型物流施設は多層階が一般的であり、各階接車のためのランプウェイや定温管理のための空調設備等が備わったハイスペックな建物です。膨大な荷物を効率的に捌くために様々なシステムが導入され、託児所やカフェテリアなど、そこで働く人にとって快適な職場になるための設備も整っています。
高速道路のIC近くや大都市の臨海部において、みなさん一度は大きな倉庫を目にされたことがあると思いますが、大規模な物流施設は延床面積が数十万㎡もあるため、他のアセットと比べても評価額が一桁違うことも珍しくありません。

評価を行う中で、ちょっとした単価の差異が評価額に大きな影響を与えることもあるので、丁寧な分析と検証を行う必要があり、そこが物流評価の面白さでもあり醍醐味だと思います。